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大分家庭裁判所日田支部 昭和31年(家ロ)15号 決定

申立人 大達安子(仮名)

相手方 小山誠(仮名)

主文

一、相手方は、申立人に対し、金八二、〇〇〇円を、次のとおり分割し何れも各月の二五日までに大分家庭裁判所中津支部に寄託し支払うこと。

昭和三二年一~ 五月 毎月四、〇〇〇円宛

〃     六月   六、〇〇〇円

〃  七~一一月 毎月四、〇〇〇円宛

〃    一二月  一〇、〇〇〇円

昭和三三年一~ 五月 毎月四、〇〇〇円宛

〃     六月   六、〇〇〇円

二、本件手続に要した費用は全部相手方の負担とする。

理由

申立人は、相手方に対し、両人の申立人に対する履行遅滞金一一〇、〇〇〇円につき履行命令の発付を求める旨申立て、その申立の実情として相手方は、当庁昭和二八年(家イ)第一三号離婚等請求調停事件の成立調書に依り、申立人に対し、慰藉料金一三〇、〇〇〇円を、昭和二八年二月二七日に一二、〇〇〇円・同年三月から昭和三三年一月までは毎月末日限り各二、〇〇〇円宛、分割支払うべき債務を負担し、且上記割賦金の支払を一度でも怠つた時には相手方は割賊弁済の利益を喪失する旨定めた。然るに、相手方はその後二八、〇〇〇円の支払をなしたのみで、残金一一〇、〇〇〇円については未だ履行を遅滞している。依つて申立人は相手方が割賦弁済の利益を喪失したものと認め、残額全部の履行を求めるため本件申立に及んだ、と主張した。

相手方が申立人に対し申立人主張の如き債務を負担した事実は、職権を以つて本件記録に添付せる当庁昭和二八年(家イ)第一三号離婚等請求調停事件の調停調書の記載に依り明白である。

其処で、相手方の申立人に対する本件債務の履行状況及び履行能力につき調査するに、大分家庭裁判所中津支部家庭裁判所調査官櫛野弘文作成に係る調査報告書の記載に、相手方本人に対する審問の結果を綜合すれば、相手方が本件債務を負担して以来今日に至るまでの間に申立人に対し本件債務の弁済として総額金二八、〇〇〇円を数回に亘つて分割し給付している事実、相手方は現在○○○として○○○○○に勤務し月額二〇、〇〇〇円前後の俸給の支給を受け且毎年六月一五日及び一二月一五日には相当額の期末手当勤勉手当等の支給を受けている事実、相手方がその他に財産を有しない事実、並に相手方は妻子四名を扶養すべき立場にあり現に扶養しているので毎月一五、〇〇〇円前後の生活費を要する事実が、何れも認められる。当事者双方の主張乃至供述並びに調査報告書の記載中、これ等の事実に対する部分は、何れも措信しがたい。

これ等の事実に基き考察すれば、相手方の本日現在における本件債務の未払額は、債権総額一三〇、〇〇〇円から前示弁済金四八、〇〇〇円を差引いた差額八二、〇〇〇円であると認められる。而して相手方は、本日までの履行遅滞の事実に依り、前示調停調書の第四項の規程の条件を成就せしめ割賦弁済の利益を喪失していると認められるので、前記未払額八二、〇〇〇円全額につき、履行遅滞の責任を負担しているとしなければならない。即ち相手方は残額八二、〇〇〇円を直ちに支払はなければならないのである。しかしながら、相手方の前示の資産収入及び生活費等を比較考察すれば、相手方に対し、履行命令を発付し金銭の支払を強制出来るのは、一ヶ月四、〇〇〇円が限度であると認められるので、当裁判所は、相手方の履行能力を一ヶ月四、〇〇〇円と認め、これに俸給外収入の予期される六月に二、〇〇〇円一二月に六、〇〇〇円をそれぞれ加算し、主文のとおり本件債務の履行を命ずるものである。

尚この命令は先に成立した調停調書の内容を変更するものではない。又正当な理由がなくこの命令に従わない時には過料の制裁を科せられることがあるので注意されたい。

(家事審判官 石田憲次)

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